こんにちは、ライトです。
▼ YOLUって何が違うの?
ケニー
あさみ
ライト
恥ずかしながら、僕も最初はYOLUを「プレミアムシャンプーのヒット」だと思っていました。ところが調べてみると、その本質は全く違う。
2021年8月発売から約1年で1,000万個、2026年5月時点で1億個突破。1.5秒に1個売れるペースです。高付加価値シャンプー市場で日本一。この異常値の理由は、製品の性能にはありません。むしろ「市場の定説を破った戦略」にあります。
この記事では、なぜYOLUがシャンプー市場で一人勝ちできたのか、その戦略を解剖していきます。
この記事で渡すもの
YOLUはなぜ1億個売れたのか、その戦略の全体像。
市場の定説から、YOLUが取った3つの戦略、そしてなぜ大手にはできなかったのかまで。
この記事の全体像
シャンプー市場の従来型戦略と大手メーカーの思考
時間帯・習慣・販売チャネルの創意工夫
組織・ポートフォリオ・意思決定の差
持続できる理由と、崩れるシナリオ
第1章:シャンプー市場の定説——大手メーカーが「朝用製品」を中心に競った時代
従来のシャンプー市場は、ほぼ決まった戦略で動いてきました。
花王やP&Gなどの大手メーカーは「朝用製品の開発」と「成分訴求」を軸に競っていました。つまり「汚れを落とす力」「頭皮を守る成分」「つやを出す仕上がり」という機能的な効果を研究し、それを訴求する、という定説です。
このアプローチは理にかなっていました。成分の科学的根拠が購買決定を動かしていたからです。朝用製品という市場セグメントが明確に存在し、定量調査の購入意向も高かった。つまり「データが支持する戦略」だったわけです。
事実:実際の使用時間帯は「夜が70%」
興味深いことに、日本人の実際のシャンプー使用時間帯は、夜が70%を占めています。つまり、大手メーカーが「朝用製品」を訴求していた一方で、圧倒的多数の消費者は「夜間にシャンプーしている」という矛盾が存在していました。
ここが大事です。朝用製品市場は確かに存在し、戦略の中心でした。ところが実際の消費行動とズレていた。そこに、YOLUは着目したわけです。
第2章:YOLUが取った3つの戦略
YOLUの勝利は、3つの戦略の組み合わせです。それぞれが「市場の定説の真逆」を行きました。
戦略①:時間帯セグメンテーション——「朝用」ではなく「夜間専用」
通常、シャンプーは「汎用性」を求めます。朝にも夜にも使える製品が「万能で安全」と見なされるからです。ところがYOLUは意図的に「夜限定」というセグメントを創出しました。
「寝ている間に髪をケアする」「翌朝のまとまりを実感」というコンセプトは、市場に存在しなかった時間帯を創出するものです。朝のシャンプー市場では花王に勝てない。ならば「夜という別の時間帯を作ろう」という意思決定です。
しかもそれは、実際の消費行動(夜が70%)と合致していた。大手メーカーが見落とした「実使用と訴求のズレ」をYOLUは製品コンセプトで埋めたわけです。
戦略②:習慣設計&心理的便益——機能ではなく「儀式」を売る
次に、YOLUが訴求したのは「成分」や「洗浄力」ではありませんでした。代わりに「香り」「パッケージの世界観」「夜のリラックス儀式」を中核に据えました。
つまり、機能的便益(髪が綺麗になる)よりも、心理的便益(夜のケアで自分を大事にしている感覚)を売ったわけです。
これは大手メーカーにとって「数値化しにくい」領域です。花王の購入意向調査では、おそらく「洗浄力」「保湿成分」のような機能的ワードが上位に来ていたと言えます。ところがI-neが選んだのは、定量調査では次点だった「夜間美容習慣」でした。
戦略でこう見る:定量 vs 定性の意思決定
多くの企業は「定量調査の結果」を鵜呑みにします。ところがI-neは「定量調査を参考にしつつ、実使用の現実と市場の潜在ニーズで判断した」と考えられます。その勇気が、競争のない新カテゴリを生みました。
戦略③:オンライン空中戦×オフライン泥臭い営業の統合
販売チャネル戦略も工夫がありました。多くのベンチャーは「D2C一本」または「既存流通一本」を選びます。ところがYOLUは両方をやりました。
SNS(TikTok・Xなど)でバズを起こし、オンラインECでトリガーを作る一方で、ドラッグストアの棚取りは「小売り利益率が高い価格設定」(約1,540円)で営業を成功させました。
オンラインの話題性と、オフラインの大量販売を両立させることで、全国6.5万店舗という圧倒的なリーチを実現しています。
第3章:なぜ大手メーカーはこの戦略を取れなかったのか
花王やP&Gのような大手メーカーが、同じ戦略を取れなかった理由は3つあります。
まず、組織の意思決定です。大手メーカーは「定量調査」を神聖視します。購入意向が高いコンセプトを優先する。ところが「夜間美容」は定量調査では最上位ではなかったと言えます。大手組織では、そのコンセプトを強行採用するのは難しい。
次に、ポートフォリオの制約です。大手メーカーが「朝のシャンプー」を持ちながら「夜のシャンプー」を出すと、自社製品同士が共食い(カニバリ)します。ところがI-neは、BOTANISTで「朝日常ケア」、YOLUで「夜習慣ケア」とセグメントを分けることで、むしろポートフォリオを強化しました。
最後に、意思決定のスピードです。大手メーカーには多くのレイヤーがあり、新しい概念を市場に出すまでに時間がかかります。ところがI-neは「I-neらしさ」という経営理念で素早く決定できた。先行優位を確保できたわけです。
戦略でこう見る:組織サイズと創意工夫のトレードオフ
大手は「確実性」が求められ、ベンチャーは「創意工夫」が求められます。YOLUはこのベンチャーの優位性を最大限に生かし、大手が避ける「未証明の時間帯セグメント」を選んだ。これが勝利につながった。
第4章:競争優位の源泉と、崩れるリスク
YOLUの競争優位は、簡単には崩れません。ただし永遠ではありません。
まず、持続できる理由として考えられるのは「リニューアルと継続的な改善」です。2025~2026年に、ナイトキャップセラム配合で効果をアップグレードしています。ベストコスメ76冠という信頼資産も強い。
ただし、リスクも見えています。大手メーカーが「夜間美容」というコンセプトで攻撃してくれば、規模で負ける可能性がある。SNS戦闘が激化すれば、新規顧客獲得単価が上昇し、利益性が悪化する。1億個で市場が一巡すれば、新規層の取り込みが難しくなる。そして、何より「リピート率の維持」が課題になります。
つまり、YOLUは今「爆発的成長フェーズ」にいますが、次は「持続性フェーズ」へ移行します。そこで勝つには、習慣化の深さが全てになります。
私の感想
正直に言います。今回この分析をして、一番驚いたのは「YOLUが成功した理由は、製品ではなく、市場創造の勇気」だという点です。
多くの企業は「既存市場でいかに上位を取るか」を考えます。ところがI-neは「既存市場の外にある新しい時間帯を作る」という、更に上の発想をした。その違いが、1.5秒に1個売れるペースという異常値につながった。
しかも興味深いのは、その判断が「定量データと異なっていた」という点です。定量調査では朝用製品が支持されていたのに、I-neは実際の消費行動(夜が70%)に目をつけた。普通は逆です。データを信じすぎて、潜在ニーズを見落とす。
▼ YOLUから学べること
ケニー
あさみ
ライト
ケニー
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結論
YOLUが1億個売れた理由は、製品の性能ではありません。市場の定説を破り、「実使用と訴求のズレに目をつけて夜という新しい時間帯」を創出し、習慣化させた経営戦略です。
時間帯セグメンテーション。心理的便益の訴求。オンライン×オフラインの統合。この3つの戦略が、大手メーカーが気づかない市場を作り、圧倒的優位を生みました。
そして、この戦略から市場を読む目を養うなら、明日から「自分の朝(本業)の外にある隙間ニーズ」を探してください。そこに、競争のない新しい市場があります。
すべての挑戦者の手に、勝てる「戦略」を。戦略を知れば、世界は読み解けるゲームに変わる。その確信と武器を届けることが僕のミッションだ。
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