OpenWorkと転職会議の口コミは”事実”でなく”観測点”――応募が止まった人への読み解き方

こんにちは、ライトです。

口コミは「会社の事実」ではなく「誰かが特定の位置から見た観測点」です。信じるか信じないかではなく、誰の観測か・どう集められたか・何と照合するかで分解してから、応募判断に組み込みましょう。

▼ 導入

たつや

この会社、口コミの評価がかなり低いんです。応募ボタンを押す指が止まりました。

あさみ

口コミサイトなんて、不満のある人しか書き込まないから話半分でいいんじゃない?

たつや

でも求人票はきれいなことしか書いてないし、どっちを信じればいいのか分からなくて。

あさみ

逆に、口コミが少ない会社の方が安全な気もするけどな。

ライト

実はその「信じる・信じない」という問い自体が、判断を止めている原因かもしれません。

ライト

なぜそうなるのか、構造を解説します。

求人サイトを開けば、きれいな言葉が並んでいます。でも同じ会社の口コミ欄を見ると、正反対の景色が広がっている。残業、人間関係、評価の不透明さ。どちらが本当なのか判断がつかなくなり、応募ボタンの前で固まってしまう人は、決して少なくありません。

僕は人材会社でエージェントの育成に関わっていたころ、ある候補者が「月内に決めないと流れる」という都合のいい言葉で、本命でない会社への承諾に少しずつ傾いていく場面を見ました。評判や言葉は、必ずしも本人のためにできているとは限りません。

口コミも同じです。「事実か嘘か」で二択にした瞬間、思考は止まります。必要なのは、その口コミが「誰の、どんな位置からの記録か」を分解して読むことです。

この記事で分かること

口コミは会社の事実ではなく、投稿者の位置から見た観測点です。

応募継続・見送り・エージェントを通じた検証、どれにつなげるかが分かります。

▼ こんな悩みを持つ人へ

  • 口コミの低スコアを見て、応募ボタンが押せなくなっている
  • 公式の求人情報と口コミ、どちらを信じればいいか迷っている
  • 同じ会社なのに口コミの評価が割れていて、判断がつかない
  • 口コミを見て辞退・保留したあと、それでよかったのか不安が残っている
  • 口コミの内容を、エージェントにどう確認してもらえばいいか分からない
  • 口コミが少ない会社を「安全」と考えかけている

この記事の全体像

STEP1

口コミは事実ではなく観測点だと置き直す

STEP2

なぜ口コミが判断を止めるのかを構造で知る

STEP3

「誰が・いつ・どこから」の条件で分解する

STEP4

公式情報・複数サイト・エージェントで照合する

STEP5

応募継続・見送り・準備継続を時間軸で決める

口コミを開いた瞬間、応募ボタンが押せなくなる

正直に言うと、口コミページを開いて指が止まるのは、あなたの意志が弱いからではありません。

口コミサイトの画面は、信じるか信じないかを一瞬で決めさせるような作りになっています。低いスコア、強い言葉の投稿。目に入った瞬間、頭の中で「この会社はダメだ」という結論が先に出てしまう。

でも、その結論の出し方自体に構造的な問題があります。口コミは「会社全体の真実」ではなく、「投稿した一人が、その部署・その時期に経験した出来事の記録」にすぎません。

そう考えると、必要なのは信憑性の判定ではありません。「誰が、どう集めた情報を、何と照合して読むか」という3つの分解です。次の章から、なぜ口コミがここまで強く応募行動を止めるのか、その構造を見ていきます。

▽ ここから「なぜこの状態を放置すると危険なのか」の話

口コミは、応募行動を実際に止めている

多くの転職検討者は、応募前に口コミを確認しています。ワークポートの調査では、SNSや口コミを確認した人は83.8%にのぼりました(ワークポート「転職活動におけるSNS・口コミの影響」2026年6月4日公開)。

さらに気になるのは、公式情報と口コミが食い違ったときの反応です。同調査では、口コミ側を信頼すると答えた人が43.8%だったのに対し、公式情報を信頼すると答えた人は29.1%にとどまりました。

公式と口コミが食い違うと、人は「公式」より「口コミ」に倒れやすい。

そして、口コミがきっかけで実際に応募や選考を離脱した経験がある人は、合計で48.0%にのぼります(同調査)。

PRESIDENT Onlineの記事では、口コミを見て応募を見送った人が一定数いること、そして影響したテーマとして給与、人手不足、人間関係、残業、ハラスメントが挙げられています(PRESIDENT Online 溝上憲文、2024年3月7日。母集団の詳細は一次確認できていないため、数値は主要な数字としては扱いません)。

つまり、口コミは「読むだけのもの」ではなく、実際に応募という行動を止めています。だからこそ、正しく読み替える必要があります。

口コミが「会社の事実」になりにくい、3つの構造

なぜ口コミは、会社の事実の写しにならないのか。理由は3つの構造にあります。

1つ目は、規模がそのまま代表性にはならないということです。OpenWorkには2,000万件を超える口コミが集まり、会員数は753万人、掲載企業は約7.9万社にのぼります(オープンワークPR「社員クチコミ2,000万件突破」2025年10月2日)。数は膨大でも、これは「全社員の意見のカバー」ではなく、「投稿する動機を持った人が、投稿の仕組みに沿って書いた記録の集積」です。

2つ目は、投稿のインセンティブが点数の分布の形を変えるということです。米国のGlassdoorでは、2013年から2016年にかけて「Give to Get(見るなら投稿する)」という仕組みが導入され、極端なレビューが減り、中間的な評価が増えたことが、11.6万件の比較で示されています(Glassdoor Economic Research「Give to Get」2017年10月11日)。米国・この期間のデータであり、日本のサイトに同じ数値をそのまま当てはめることはできませんが、「点数の分布は設計で変わりうる」ことを示す一次情報です。日本のサイトに同じ数字は使えません。でも、今見ている平均点が「自然な真実」ではなく「そのサイトの集め方の産物」である、という読み方だけは持ち帰れます。

3つ目は、企業側から見ても、口コミは「事実の写し」になっていないということです。中小企業を対象にした調査では、94.3%がネガティブな口コミの掲載を認識し、約7割が応募数の減少を実感していました。また、92.0%が「事実と異なる口コミがある」と回答しています(ソルナ/IDEATECH「採用サイトへの口コミの影響に関する実態調査」2024年11月28日発表。これは企業側の認識であり、口コミ全体が虚偽だという意味ではありません)。企業側が「事実と違う」と感じていることと、投稿者が嘘を書いていることは別です。ここでも二択にしないでください。

そして、たとえ口コミを「確定した情報」として扱ったとしても、入社後のギャップが消えるわけではありません。厚生労働省の調査では、転職者の53.4%が満足、11.4%が不満と回答し、直前の離職理由は労働条件28.2%、仕事内容26.0%、賃金23.8%でした(厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」2021年11月8日公表)。つまり口コミを全部信じても、全部捨てても、入社後のずれは消えません。確認すべき本丸は、仕事内容・労働条件・賃金です。

⚠️ 信じすぎても、無視しすぎても起きること

  • 口コミだけで応募を止め、自分に合うかもしれない候補を母集団から消してしまう
  • 公式情報だけを信じて入社し、仕事内容・労働条件・賃金のギャップに直面する
  • 1件の強い言葉を全体の傾向と誤認し、確認すべき質問を作れないまま終わる
  • 口コミが少ない企業を、根拠なく「安全」と読んでしまう

これらは、口コミを信じすぎても、無視しすぎても起こりえます。

ここで起きているのは、情報そのものの問題ではありません。「判断を誰に委ねるか」という問題です。

口コミ側に倒れても、公式側に倒れても、構造は同じです。自分で検証する手順を持たないまま、外側にある情報に判断を丸ごと預けてしまっている。

だから次に必要なのは、「この口コミは本当か」を問うことではありません。「この観測は、誰の、どの位置からのものか」を分解することです。

▽ ここから「本当に解くべき課題は何か」の話

本当の課題は「信じるか」ではなく「誰の観測か」を分解できていないこと

表面的な悩みは、「この口コミは本当か」「何点以下なら避けるべきか」というものです。でも本質的な課題は別のところにあります。観測条件を分解しないまま、判断を単一の情報源に預けてしまっていることです。

従業員のレビューを扱う研究の世界でも、この前提は共有されています。ある系統的レビューでは、従業員レビューは自己選択バイアスや知覚バイアスを前提として扱うべきだと指摘されています(Gimpl「The Wisdom of Electronic Employee Crowds…」2025年)。学術的な限界の指摘であり、日本の口コミサイトに同じ数値が当てはまるという意味ではありません。

一方で、「口コミが当たっていた」と感じる人がいるのも事実です。ある記事では、転職会議の利用者14人中12人が「事実と一致していた」と回答したと紹介されています(ミライトーチMedia、2026年9月11日)。ただしこれは14人という小さな母集団の感覚値で、選択バイアスの指摘も同じ記事の中でされています。85%が当たる、という一般化はできません。

「当たっていた」という感覚と、構造的なバイアスがあるという事実は、両立します。

僕は人材会社でエージェントの育成に関わっていたころ、面談でよくこう伝えていました。

「会社の給与表は、世の中全体の値段表じゃない。その会社が、その制度の中で、あなたに今つけている値段にすぎない。」

同じ構造は、口コミのスコアにも当てはまります。スコアは全従業員の真実ではなく、投稿した人が、その位置から記録した観測点にすぎません。一つの数字を、それが作られた条件から切り離して絶対視すると、判断を誤ります。

新人エージェントの育成をしていたころ、ある30代の男性求職者の面談に同席したことがあります。最初の30分、彼は淀みなく話していました。「現職では裁量が限られていて」「もっと大きな案件を任せられる環境に行きたい」。どこかで聞いた、正しいとされる言葉です。僕は一つだけ聞きました。「今の会社で、最後に『これは自分がやったな』って胸を張れる仕事って、何でした?」。彼は言葉に詰まり、しばらくして「最終報告で、上司が自分の手柄のように話していて、僕の名前は議事録の末尾に一行載っただけでした」と話し始めました。借りてきた言葉は30分もちましたが、自分の言葉になった瞬間、本当の話が始まりました。

口コミ画面でも同じことが起きます。強い投稿の言葉を、そのまま自分の応募判断の言葉として借りた瞬間、思考は止まります。借りる前に、投稿者の位置だけ先に書き出してください。自分で確かめて初めて、その観測点は意味を持ちます。

本当の課題

表面:「この口コミは本当か」
本質:「この観測は、誰の・どの位置からのものかを分解できていない」

なお、この読み替えは、違法な労働環境や過重労働、ハラスメントの指摘まで「気のせい」にするためのものではありません。複数の年・複数の職種で同じ指摘が重なっている場合は、それだけ観測の密度が上がっているということです。この点は、後の章で改めて扱います。

▽ ここから「では何をすればいいか」の話

軸① 誰の観測か――現職・退職・職種・投稿年で読み分ける

📌 口コミを分解する3つの軸の全体像
①誰の観測か(現職/退職・職種・在籍時期・投稿年) ②どう集められたか(投稿動機・形式・審査の構造) ③何と照合するか(公式数字・複数サイト・エージェント)。ここからは、①から順番に見ていきます。

最初に見るべきは点数ではありません。誰が書いたか、です。

多くの口コミサイトでは、運営が現職と退職の投稿を分けて表示する仕組みを持っています(オープンワークPR、2025年10月2日)。同じ会社でも、現職の立場から見える景色と、退職した後に振り返る景色は、性質が違います。

確認する項目は、次の4つです。現職か退職か。職種は自分が想定しているポジションと同じか。在籍していた時期はいつ頃か。投稿された年はいつか。

たとえば、5年前に別の職種で在籍していた人の投稿と、去年、自分が応募しようとしている部署にいた人の投稿では、参考にできる度合いがまったく違います。

なお、応募をためらわせやすいテーマ(給与、人手不足、人間関係、残業、ハラスメントなど)は、そのまま「投稿者が書きやすいテーマ」でもあります。強い感情を伴う出来事ほど、言語化されて残りやすいということです。

例外もあります。口コミの件数がもともと少ない企業では、1人か2人の、特定の部署の体験に評価が偏っている可能性があります。自分の配属予定部署と投稿者の部署が一致しているかを測った公的な調査は、確認できる範囲では見当たりません。ここは、自分ひとりで判断しきらず、次に見る「参考にする/しない」の目安と、エージェントへの一言で補ってください。

読み分けの目安は、こうなります。複数の投稿(できれば異なる時期・部署)で同じ指摘が重なっている、または投稿者の職種・在籍時期が自分の応募ポジションと近いなら、参考にする。逆に、投稿が1件だけで裏付けがない、投稿者の職種・部署が希望と大きく違う、「最悪」「終わってる」のような感情語だけで具体的な出来事の記述がない、退職から数年以上経っている、といった場合は、参考程度に留めるか、参考にしません。迷ったら、「これは出来事の記録か、感情の吐き出しか」で分けるのが早い判定です。

📎 エージェントに伝える一言(投稿者属性の確認)

「この会社の口コミで、〇〇という投稿を見ました。投稿者が現職か退職か、部署や時期も含めて、直近の在籍者の声も聞けますか」

このひと言があるだけで、エージェントは何を調べればいいかが明確になります。

軸② どう集められたか――点数の「形」は設計の産物

2つ目の軸は、その口コミが「どう集められたか」です。

OpenWorkでは、定量8項目、定性8項目(500文字以上)、実際の情報を組み合わせた、いわゆる「8・8・3」の構成で投稿を求め、機械による審査と目視による審査を組み合わせています(ITmediaビジネスオンライン、OpenWork大澤代表インタビュー、2024年7月16日公開)。

この審査は、形式やガイドラインに沿っているかどうかの確認です。投稿内容が事実かどうかを、運営が裏取りしているわけではありません。500文字以上という条件がある以上、一言だけの感情的なレビューは、そもそも出にくい設計になっています。

また、口コミサイトの多くは、口コミを見るために投稿するという仕組みを持っています(オープンワークPR、2025年10月2日)。閲覧のハードルそのものが、投稿の動機に組み込まれているということです。

そして前の章でも触れた通り、投稿のインセンティブ設計は、点数の分布の形を変えます(Glassdoor Economic Research、2017年10月11日、米国・2013〜2016年のデータ)。

そう考えると、口コミの平均点だけを見て一喜一憂するのは、あまり意味がありません。見るべきは、投稿された年の分布と、項目ごとの割れ方です。特定の年だけ評価が下がっているのか。それとも、給与だけが低く、他は安定しているのか。点数の「形」を見ることで、単一の平均点よりも多くの情報が読み取れます。

📎 エージェントに伝える一言(点数の傾向を確認)

「平均点よりも、ここ1〜2年で増えている声の傾向を知りたいです。項目別に何が上がって何が下がっているか、分かる範囲で教えてもらえますか」

自分では追いきれない投稿年の推移は、エージェント経由で確認するほうが早く、かつ角が立ちません。

次は、この2つの軸で分解した観測点を、どこに照合すればいいのかを見ていきます。

軸③ 何と照合するか――口コミの言葉を、エージェントへの確認事項に変換する

3つ目の軸は、「何と照合するか」です。分解した観測点は、それ単体では判断材料になりません。公式の数字、複数のサイト、そしてエージェントへの確認事項に変換して、初めて使える情報になります。

僕が教育関連の企業で高校営業をしていたころ、恥ずかしい話ですが、高速道路のパーキングエリアのトイレでスマホを開き、その場で検索した情報を、確認もせずに先生に話していた時期がありました。一見公式っぽく見えても、実は素人の解説や古い情報だったりします。もし間違っていたら、その場で信用が崩れます。

そこから変えたのは、その情報が「いつの・どこの・誰の発表か」を必ず確認する習慣でした。文部科学省や教育委員会の公式サイトを月に1〜2回チェックする、地味なやり方です。確証がない話は「まだ確認中ですが」と、あえて曖昧に伝える。そのほうが、結果的に信頼されました。

採用の場面ではなく高校営業での体験ですが、「どこから仕入れた情報か」で相手からの信頼が一瞬で変わるのは、まったく同じ構造です。口コミも、評判のまま運ぶか、自分で確かめてから運ぶか。その差だけが、相手に残る信用の差になります。

前の章までで見えてきた気になるテーマ、給与、人手不足、人間関係、残業、ハラスメントなどは(PRESIDENT Online、2024年3月7日)、そのままエージェントへの確認事項に変換できます。

ここで注意したいのは、口コミの内容を面接官や人事に直接ぶつけないことです。「残業が多いという投稿を見たのですが」とそのまま聞くと、覚悟のない人、口コミ次第で志望度が揺らぐ人と受け取られかねません。だからこそ、まず窓口はエージェントに一本化します。事実確認をエージェントに依頼する形にすることで、指摘を詰問する形にならずに済みます。公式情報と口コミが食い違っている点があるなら、それは確認の優先順位が高い項目です(ワークポート、2026年6月4日)。厚生労働省の調査が示す通り、確認すべき本丸は仕事内容・労働条件・賃金の認識のずれです(厚生労働省、2021年11月8日公表)。

一方で、評価基準や1on1の頻度、相談窓口の有無といった「制度・仕組み」の話は、口コミの内容を匂わせずに前向きな関心として言い換えられるので、面接で直接聞いても違和感が出にくいものです。この線引きだけは、覚えておいてください。

📎 エージェントに伝える一言(テーマ別)
  • 残業が気になる投稿:「残業が多いという投稿があったのですが、繁忙期の頻度も含めて確認してもらえますか」
  • 人手不足が気になる投稿:「欠員が出たときの業務配分について、聞いておいてもらえますか」
  • 人間関係が気になる投稿:「配属予定のチーム構成や、1on1の頻度を教えてもらえますか」
  • 評価の不透明さが気になる投稿:「評価基準がどう設定・共有されているか、確認してもらえますか」
  • ハラスメントが気になる投稿:「相談窓口の仕組みがあるか、確認してもらえますか」

口コミをエージェントへの確認事項に変えたら、次は求人票のきれいな言葉も同じ手順で分解できます。「いい会社」が訴求文にすぎない理由は、別の記事でも扱っています。

口コミを検証に変える3ステップ

  • ①観測点を分解する(誰の・どう集められた口コミか、参考にすべきか)
  • ②照合先を選ぶ(公式数字/複数サイト/エージェント)
  • ③エージェントへの確認事項に変換する(制度面のみ、面接で直接聞いてもよい)

📋 エージェントに確認を依頼する前の3項目

  • 気になる口コミの投稿者属性(現職/退職・職種・時期)を書き出したか
  • 公式情報と食い違う点を1つ特定したか
  • 詰問ではなく、事実確認をエージェントに依頼する形の質問を1本作ったか

▽ ここから「短期・中期・長期でどう動くか」の話

転職・内部転換・準備継続――観測点の結果をどの判断につなぐか

観測点を分解し、照合まで終えたら、最後に残るのは「それで、どうするか」という判断です。

選択肢は3つあります。転職する。今の会社の中で異動や役割変更を試みる。そして、今はまだ動かず、市場価値の証拠を作る準備を続ける。

  • 転職:照合の結果、現職では埋まらないギャップが明確で、応募先の観測密度も十分な場合に選択肢になる
  • 内部転換:現職の中に、指摘されていた課題を解消できる部署・役割がある場合に検討する
  • 準備継続:成果・担当範囲・数字といった、自分の市場価値を示す証拠がまだ薄い場合の選択肢

この3択は、口コミの点数では決まりません。分解と照合の結果、「現職では埋まらないずれがあるか」「応募先の観測が十分か」「自分の証拠は外に出せるか」の3つが揃ったかどうかで決まります。証拠の側は、スキル・市場需要・ネゴ力の棚卸しに続きます。

準備継続が合理的なのは、今のスキル獲得が途中で、市場価値の証拠がまだ十分でないときです。観測点だけを頼りに動くと、転職先での条件交渉の材料が不足したまま外に出ることになります。

例外もあります。同じ指摘が、複数の年・複数の職種にわたって重ねて出てくる場合、それは観測の密度が上がっているということです。この場合は、エージェント経由で36協定の範囲や有給取得の実態などを具体的に確認すべき段階に進んでください。

そして、これははっきりさせておきたいのですが、現在進行形の違法な労働環境や、過重労働、ハラスメントの被害は、口コミの読み方の問題ではありません。労働基準監督署や相談窓口に相談すべき問題であり、この記事が扱う範囲の外にあります。

私の感想

正直に言います。この話をするとき、僕はいつも同じシーンを思い出します。

人材会社でエージェントの育成に関わっていたころ、ある月末の金曜19時、オフィスにはもう数字の匂いしかしませんでした。候補者は30代前半の経理の女性。本命はB社でしたが、先に内定が出たのはA社でした。承諾期限は月末にかかっていました。

営業マネージャーが言いました。「B社を待つ理由、本人にそこまである? A社でいいじゃん」。その後も「A社も十分いい会社ですよ」「ご縁というものもありますし」と、少しずつ承諾へ傾けていく言葉が続きました。

正論に聞こえます。でも僕には分かりました。あれは彼女の将来を見た言葉ではなく、月内成約を落としたくない言葉でした。悪人がやっていたわけではありません。みんな普通の顔で仕事をしていた。だからこそ、構造として強いのだと思います。

あの場に流れていた「評判」は、A社の実態の評判ではなく、「今決めないと流れる」という恐怖の評判でした。本音(本命に行きたい)と建前(ご縁もある)のズレが、誰かの都合で埋められていく。その後、彼女がどんな選択をしたのか、正直、僕は覚えていません。あの時、僕に足りなかったのは、評判を信じすぎたことでも無視しすぎたことでもなく、自分が疑っていることを口に出す勇気だったんだと思います。

あの光景を見て以来、僕の中で「評判は、誰かが誰かのために作っている言葉であって、本人のためとは限らない」という感覚が、はっきり残っています。口コミも同じ構造です。書かれている言葉は、会社の公式な顔でも、絶対的な真実でもありません。投稿した一人が、その位置から記録した観測点です。だからこそ、鵜呑みにするのではなく、分解して読む価値があります。

口コミを分解して会社側の状態が見えてきたら、次に必要なのは「自分がこの市場でどんなカードを持っているのか」を確かめることです。詳しくは、市場価値を構成する3つの要素(スキル×市場需要×ネゴ力)を扱った記事でも解説していますが、口コミの読み替えは、その市場価値を確かめるための準備運動にすぎません。

▼ 結論

たつや

さっきまで「信じるか、信じないか」で止まっていましたが、分解して考えればいいんですね。

あさみ

結局、口コミって信用できるの?できないの?

たつや

そのどちらでもなくて、誰が・どう書いたかを見て、自分で照合するしかないんだと思う。

ライト

その通りです。判断は、あなたが照合した結果で決めるものです。

ライト

次にやることは登録ではありません。今開いている口コミを1件、投稿者の位置だけ書き出すことです。

ライト

そのうえで、自分の仕事側も同じように分解したくなったら、無料の診断を材料にしてください。答えを出すためのものではありません。言葉にしにくい部分が残るなら、そこで初めて第三者と話せばいい。一人で抱え込む必要はありません。

結論

口コミが少ない会社を「安全」と感じた人は、その件数の少なさごと観測条件として見てください。安全かどうかは、点数ではなく照合で決まります。

結局、これだけです

口コミは、事実でも嘘でもありません。誰かが、特定の位置から見た観測点です。信じるか信じないかではなく、①誰の観測か②どう集められたか③何と照合するか、の3つで分解してください。判断を動かすのは、1件の強さではなく、観測の密度と照合の結果です。

📋 次に何をするか

  • 今開いている口コミを1件選び、投稿者属性(誰の観測か)を書き出す
  • 公式情報と食い違う点を1つ見つける
  • エージェントに依頼する、事実確認の質問を1本作る

口コミを分解したあとに残るのは、会社の点数ではなく、今の自分の仕事の分解です。

今回お伝えした読み方は、あくまで「情報の分解」です。分解の先にある、自分自身の市場価値、スキル・市場需要・ネゴ力の棚卸しは、また別の作業になります。無料の適性診断は、答えを出すためのものではなく、今の自分の仕事を分解して考えるための材料です。気になった方は、このタイミングで一度、現在地を確認してみてください。

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この記事を書いた人

MBA取得・転職業界10年以上・3000人以上の転職支援を経て気づいた「年収の本質」を発信しています。
20代は2時間睡眠で働いても年収が上がらず、「生産性が悪い」と評価された時期も。転職を重ねる中でやっと見えてきたのが「年収は椅子で決まる」という構造でした。
その構造を、企業戦略・AIスキル・転職ハック等の軸で体系化したのがこのブログです。
ベネッセ・リクルート・シンクタンクを経て現在に至る。MBA保持者。Udemy「AI時代の転職術」講師。

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